胆嚢摘出術による入院記録(6日間)
はじめに 胆石症を患いました。胆石症は胆嚢内に結石が生じる病で発作を起こすと、救急搬送からの緊急手術となる病気です。ちなみに発作の確率を聞いたら年3%くらいだそうな。年3%がどの程度の確率かというと、20年で46%、40年で71%、60年で84%となるので、死亡率を考えても発作を起こさないで生きるにはそこそこの幸運が必要となります。 ただ、医療技術は日進月歩ではあるので将来は別の治療法ができる可能性は非常に高いです。発作を起こしてから対処するのか、発作を起こす前に対処するのは判断が分かれると思います。ちなみに医者は決めてくれないので患者が決めましょう。一般的には発作が起きてからの人が多いですが、私は2つの理由から発作が起きる前に対処しました。 理由の1つ目、「時期が選べない」。当然のことながら発作はいつ起こるかわかりません。能動的に起こせません(起こせたして起こさないと思うけど)。長期のスケジュールを立てて、仕事をすすめる身としては不確定要素はできるだけなくしておきたいです。 理由の2つ目、「発作時のほうが対処が難しい」。発作は炎症という形で現れますが、炎症は炎症物質により周囲の組織にも炎症を引き起こします。体的には臨戦態勢ですね。胆嚢の周囲の臓器は肝臓・膵臓・十二指腸あたりです。炎症を起こすと臓器間の境界が曖昧になるので手術の難度が上がります。場合によってはある程度の炎症を抑えてからになるので入院期間も伸びます。同じ対処するなら短期間で終わらせたい。 胆石 胆嚢にできた結石で、生成要因も構成物質も複数種類ある。しかし、大抵はコレステロールの結晶で、私にできたのもこれです。 これだけだと、「またコレステロールか」みたいな声が聞こえそうですが、コレステロールは体内では必須の物質です。食品中のコレステロールの摂取の過多は血中のコレステロールとは関係性がまったくないか極めて薄いというのが最新学説になってます。 血中のコレステロールが多くなりすぎると、肝臓から胆汁の形で体外へ排出されます。胆汁は常に生産されつつけますが、消化酵素こそないですが、消化補助的な役割もあるので、飲食時にたくさん分泌できる方が都合がいいです。そのための一時貯留を行う臓器が胆嚢となります。しかし、貯留するゆえにコレステロールが多くなりすぎると析出してしまい、結晶化します。これが胆石の正体となります。 一般的には10mm以上で要手術らしいです。私はというと、最大45mmという大きさでした。この大きさが手術の際にちょっとした問題を起こします。 対処方法 対処方法はいくつかあるのですが、私も選択した内視鏡による胆嚢摘出術が今の所一般的です。 内視鏡をお腹に差し込んでカメラとマジックハンドを駆使して胆嚢を引っこ抜く方法大1小2の3つの穴をお腹に開けて手術します。私が受けた手術もこれです。大きな穴はお臍の部分を切って手術痕をできるだけ目立たなくします。金槌の私としてはお腹を他人に見られる場面は温泉くらいかなあ。特に気にしてませんでした。ちなみに大きな穴1つで手術をする方法もあるんですが、死角が多くなるので難しいそうです。別に無理しなくていいよお お腹をバッサリ切って肉眼で見ながら対処する方法かつては主流だった方法です。術後の回復が遅くなるのが難点だとか内視鏡では対応が難しい場合に選択されます。炎症がひどいとか 内服薬で結石を融解するこれ発表されたときには「ついに胆石も切らずに済むようになったか」とか話題になったんですけどね。実際は結石の種類によっては全く効果がないし、効果があってもなかなか小さくならないとかで、だめだぜこいつ扱いになった。将来的にドラッグデリバリー技術の発達で主流になるかもしれないんですけどね。 超音波などで物理的に細かく砕いて胆管から排出されるようにする割と砕けないらしい。そして中途半端に砕けた欠片が胆管に詰まって大事になるとか・・・。尿路結石はこの方法が取られるらしいんですけどね。 1日目 病院から指定された時間・場所に入院の手続きに行きます。 午前中でした。 昼ごはんから病院食になりますが、なかなか美味しい。 久しぶりに入院しましたが、病院食は本当に美味しくなってますね。 おかげで密かに持ち込んだ、砂糖・塩・醤油・本出汁は完全に荷物になってしまいました。 翌日は手術なので、手術前に身を清めます。 手術の説明は21時でした。医師も多忙なようです。 説明内容としては合併症の症状と確率・麻酔の説明(これは麻酔科医から)・輸血の可能性などになります。 説明を受けながら、同意書にたくさんサインします。 この病院の1日のスケジュールは 6時 起床 8時 朝食 午前中 回診 12時 昼食 18時 夕食 22時 就寝 となります。 看護師さんから「眠れないかもしれませんが、明日の手術に備えて休息してください」と言われましたが、私は枕が変わると眠れないとかそういうのはないので22時でしっかり就寝しました。 眠る前に手術に備えて下剤を2種類飲みます。かつては大腸内のガスに電気メスが引火するという事故もあったそうな。 2日目 この日は手術なので長い一日になりました。 朝食は禁止なので出ません。水も6時以降はだめです。 更に昨夜の下剤で綺麗サッパリして、手術室に徒歩で向かいます。運ばれるんじゃないのか・・・ 手術は外科医3名、麻酔科医1名、看護師2名の6人体制。そういえばProject Hospitalってゲームも6人体制だったなあ。 手術前に全員で作業内容を確認し合う姿が安心できます。 意識があったのはここまでです。無影灯がLEDで更に細かくなって影ができにくくなり、たくさんの可動式液晶モニタが並んでいて、最新技術でどんどん新しくなるんだなあとちょっとだけ感心しました。しかし、じっくり観察はできませんでした。そりゃそうだ 手術が終わって覚醒させられましたが、意識は朦朧とした状態でストレッチャーで病室まで戻りました。 病室でレントゲンを撮影します。手術機器の残置がないかの確認ですね。それにしても病室でレントゲン取れる時代なのも驚きです。 この時点でお腹を切られて身動きがとれないことに気が付きます。まあ、四肢は完全に動くのでベットの柵を利用してなるべく楽な姿勢になっておきます。 夜になって麻酔が切れると激痛が始まり、発熱も起こります。ナースコールで鎮痛剤を要求。 意識が飛んで、戻ったときも継続して激痛。鎮痛剤をさらに要求。が、看護師が利用できる鎮痛剤は翌朝6時まで使えないという無情なる通告。 その後、激痛で意識を飛ばす、ちょっと回復して覚醒して激痛を味わう、というのを何度も繰り返す・・・ 3日目 朝になって鎮痛剤を投与。でもこの鎮痛剤効かない・・・ その後、日中になり薬を処方する医師が活動時間になると何種類かの鎮痛剤を試してみて、ようやく昼になって効果がある鎮痛剤が判明。 これで一安心・・・。 ところが、看護師から「鎮痛剤が効いているうちに歩け」と・・・ 鬼か 点滴棒にしがみついて歯を食いしばって歩きます。 実はこれ合併症と寝たきりを防ぐ方法です。 術中は腸の動きは邪魔なので麻酔で止めますが、手術の傷で炎症が発生するので腸がくっついてしまいます。その場合、腸の動きが阻害され腸閉塞となり再手術です。 ご飯も食欲はありませんが、腸を動かすために無理やり食べます。 こうして、食事とリハビリで体力を使い果たす生活が始まりました。 4日目 午前中の回診で翌々日の退院を宣告される。いや、この時点で私は20mも歩けてないんだけど・・・ しかも、早い人だと4日目で退院するとか、信じられぬ。 確認すると、年齢が若くて腹筋が強くて痛みが強いこと、結石が大きくて摘出用の穴を拡張せざるを得なかったことが要因のようです。穴は多分拡張すると聞いてましたが、年齢の影響はちょっと想定外でした。 それでも、夕方にはご飯とリハビリ以外の活動ができるほどには回復してきました。 そして回復したので導尿用のカテーテルも抜かれる・・・ いや、今の私は90代の人の2倍位歩くのに時間かかるんですが、トイレ間に合わんって・・・ 5日目 この頃になると1日のスケジュールはほぼ固定になります。 6時 起床してそのままリハビリ 8時 朝食 投薬 10時 リハビリ 12時 昼食 投薬 14時 リハビリ 16時 リハビリ 18時 夕食 投薬 20時 リハビリ 22時 就寝 投薬 リハビリは1日5回を指定されたので、なるべく分散して負担を減らしましたが、投薬間隔が開いてしまう朝が一番きついです。 11時に回診があったときに、流石に明日は無理だから延長を要求しましたが、却下されました。この時点で無負荷平坦路で400mが最長歩行距離だったので、流石に荷物を持って移動はきつそうだったのです。 「ここは病院で病人がいるところです。あなたは病人でなくただお腹を刺された人です。」 タ、タシカニ・・・ 入院するときは胆石症という病人でしたが、今は違うしなあ。 納得してしまったので、午後はさらにリハビリも食事もがんばります。食欲なくても全部食べます。 気合が通じたのか、ようやく午後にお腹からガスが放出されました。これで消化器系は復旧ですかね。 6日目 退院の準備を進めます。 荷物をまとめて、できるだけ背負うようにします。背中は無傷なので 退院の時間は選択肢があるので、投薬間隔が短くなり、最も薬の効果が出る昼食後を選びました。 入院時は徒歩で来ましたが、帰宅途中で力尽きると間違いなく救急搬送で再入院なので、安全性からタクシーを利用することに こういうときだけはボッチが辛い・・・ 最終的にリハビリは1km歩けるようになってました。 悔しいですけど医師という専門家の判断は正しかったというわけですね。無事6日目に退院するになりました。 食事 写真撮る余裕があった分だけになりますが、食事は次のような感じでした。 胆石症は食事制限がありません。他に食事制限つくような疾病は持ってないので、これは一般常食となります。 1日目昼 1日目夜 4日目夜 5日目朝 5日目昼 5日目夜 6日目朝 6日目昼 手術後の食事の許可が下りたときからお粥なんてものはないです。 胆嚢は本当に食事制限つかないです。しかもどれも美味しい・・・ 食事がもたらす栄養以外の効果が認められているせいもあるのでしょうね。 塩分過多にならないように料理ごとに味のメリハリを付けている感じですね。しっかりとした塩味がついている料理もありますが、どれか1品が濃い味という感じです。 また、バリエーションも豊富で本当によく考えられてます。他にも一般常食は選択制で2つのメニューから選ぶことができました。残念ながら選ぶ日に私は前後不覚の状態で選べなかった。